56億円でジェット機発注 投資事業組合

 ライブドア前社長で証券取引法違反容疑で逮捕された堀江貴文容疑者のニックネーム「ホリエモン」の名前が入った投資事業組合が、米国の航空機メーカーに4700万ドル(約56億円)で自家用ジェット機を発注していたことが、取引にかかわった関係者の話で4日分かった。

 この関係者によると、同投資組合は発注の際に、堀江容疑者の個人資産を管理するために設立された組合だと説明していたという。

 堀江容疑者をめぐっては、同様の投資組合が複数存在しているとの証言もある。情報開示の必要がなく、今回の証券取引法違反事件で悪用された投資組合の仕組みが、堀江容疑者の個人資産の管理・運用でも多用されていた可能性が浮かんできた。

 民法の任意組合はおいといて、商法における「匿名組合」という呼称からも推測できる通り、投資事業組合とはその構造上、その営業者やGK以外は表に顔を出さなくてよく、また、出資者はそれが株式公開企業であっても投資の事実を開示する必要はありません。すなわち

 「悪人にとって悪用するなというのが無理な相談」

 な、仕組みな訳です。ただ、今回の騒動で、一部のメディアではこの投資事業組合のシステムが錬金術の一つのように報道され、かつ非常に巧妙な手法のように持ち上げられていますが、ぶっちゃけそんなことはありません。金融特にファンド業務をやっていた人間なら、今回のケース程度のカラクリは1年目のペーペーでも思いつきます。

 それでもこういう事件がこれまで(表立って)起きていなかったのは、ファンドの組成担当者の大半がそんな無理をする必要の無いサラリーマンであったから。そして何より仕組みの抜け穴を使った悪用・暴走はその時点ではよしとされても、遠からず自分達や自分達が属する業界の首を絞めることを良くわかっていたからです。

 合法な手法の連続による「(限りなくグレーですが)白」なアプローチであっても目的が「黒」である場合、仮にそのケースだけは言い逃れが出来ても、その事件を奇禍として制度の見直しが行われ、残りの案件への縛りや制限が増える。そのリスクを現場の人間特に業界の一員であることを自覚している人間はよく理解していますし、それ故に禁断の果実にはその存在がわかっていても手を出さない。その意味でライブドアと堀江容疑者をはじめとする同社経営陣の視野は、自社の足元の利益しか見えていない非常に狭いものであったと言えましょう。

 今回こうなってしまった以上、投資情報の開示の徹底など制度の見直しは進むでしょう。それはそれで必要な処置です。しかし、その後もまた抜け穴を探そうとする人間や企業は必ず現れます。そこに禁断の果実がある限り。そしてその時、今回の騒動を記憶している方々には考えて欲しいと思います。不備があるのはシステムと人、どちらなのかを。

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