比政府、出稼ぎ自国民1万人に無償で帰国便を手配な件について

今回の「クウェートに滞在しているフィリピン人1万人帰国支援プロジェクトbyフィリピン政府」は、クウェートに出稼ぎに行ったフィリピン人の受けている虐待の数々が、国際問題としてクローズアップされたのが発端。記事にもあるように、虐待の末に殺されたフィリピン人女性が複数いるのは事実であり、非難すべき人権蹂躙がクウェートで起こっていることに間違いはない。

　ただ、ここで誤解を恐れずに言うと、クウェートの国民がフィリピン人に対して特別残酷というわけではない。

たとえば、日本への出稼ぎが急増しているネパール人の場合、日本に来ている同国人は、留学生を除くとインド/ネパール料理のコックなど手に職がある人が多いので、彼らは日本人と仕事を済み分けて共存できている。

一方、クウェートを含む中東に行っているネパール人は、英語ができるだけのメイドさんや肉体労働者が多い。こちらは今回問題になったフィリピン人と同様に、現地でかなり酷い扱いを受けている。メイドを雇う個人の富裕層や労働者を酷使する雇用主から。

つまり、雇用主と被雇用者の間の身分や所得、従事している仕事のグレードなどの格差が大きい国や地域では、どこでも、今回のクウェート人とフィリピン人のような事件は起こりうるということだ。中東はもちろん欧米でもアジアでも、そしてもちろん日本でも。というか、

「日本では既に事件化していて、絶賛増加中だけどね」

外国人技能実習制度の「錦の御旗」のもと、日本人「雇用者」がやらかしている外国人「被雇用者」への虐待、それらを発端とした刑事事件や悲劇として。

同制度の目的が、お上のいう「技能、技術又は知識の、日本から開発途上国等への移転」「開発途上国等の経済発展を担う人づくりへの協力」だなんて信じている人間、日本人ですらほとんどいない。むしろ、同制度の関係者にこそ、信じているふりをして技能実習生を受け入れ、「人づくり支援」とはとても言えないブラックな待遇で彼らをこき使っている不逞の輩がゴロゴロいる。

そりゃ、職場から逃げ出す実習生も増えるわな。外国人技能実習制度の「善意」なんて端から信じてなくて、トンずらする気満々で来日する外国人も皆無じゃないだろうけど、日本での待遇が良ければ、彼らだってわざわざお尋ね者になる道を選ぶわけもないわけで。

今も、人不足に悩むコンビニ業界が「レジ打ちや商品陳列に加え、在庫管理も含めた営業計画の作成など、店舗運営を学ぶ場にするから、コンビニで外国人技能実習生を働かせてもいいでしょうか」なんてふざけたお伺いをお上に立てているけど、ぶっちゃけ「人を馬鹿にするのも大概にしろ」ですよ。

そんな目晦ましで世間と世界を誤魔化し続けていると、遠くない未来に「日本で虐待を受けた出稼ぎの自国民1万人を無償で帰国させるぞプロジェクトbyどこかの国の政府」という事態が起こってもおかしくない。日本政府と日本経済界、そして日本社会は、今回、クウェートとフィリピンの間で起こったこの事件を、日本と縁のない話とは努々思わないことだ。

フィリピン、出稼ぎ労働者１万人に無償の帰国便　虐待相次ぎ

マニラ（ＣＮＮ）中東のクウェートでフィリピン人の女性労働者らが死亡する事件が相次いでいることを受け、フィリピン政府は同国への出稼ぎ労働者１万人に対し、無償での帰国便の提供を始めた。

フィリピンのドゥテルテ大統領はこれに先立ち、クウェートへの労働者派遣を禁止すると発表していた。同氏は１３日、「皆さんが帰国して快適に暮らせるよう、魂を悪魔に売ってでも財源を調達する」と表明した。

無償帰国の対象は、ビザの期限切れ後もクウェートに滞在しているフィリピン人１万人。１３日までに５１０人がチャーター便で帰国した。

ベリョ労働雇用相が１２日の記者会見で語ったところによると、クウェートのフィリピン大使館には１月末以降、数千人のフィリピン人が帰国手続きに訪れ、これまで２２００人余りに渡航文書が発給された。

クウェートは近年、フィリピンからの出稼ぎ先として人気が高まっていた。クウェート外務省によると、同国内には先月の時点で２７万６０００人のフィリピン人労働者が滞在していた。

一方で出稼ぎ労働者に対する虐待などの問題が指摘され、ドゥテルテ氏も「労働者の尊厳と基本的な人権を尊重してほしい」と呼び掛けていた。

クウェートでは最近、数人のフィリピン人女性が相次いで死亡した。

このうち、２０１６年から連絡が取れなくなっていた２９歳の女性は１４日、レバノン人雇用主の自宅にあった冷凍庫から遺体で発見された。

当局によると女性は首を絞められ、死後１年も庫内に放置されていた可能性があるという。

(2月14日 CNN.co.jp)

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