全トヨタ労連と自民党の接近ぶりをうかがわせる場面は幾度となくあった。
これに尽きる、愛知11区の本命・古本伸一郎の「不出馬」の背景。労組だから立民その他の野党を押さなくてはならない時代は終わりつつあります。
正式な予想発表は公示日以降に行いますが、今回の総選挙、愛知県は立憲民主党がいつも通り優勢です。しかし、今回の愛知11区の状況を見ていると、それは革新王国・愛知の最後の輝きなのかも知れません。
自民との距離縮めた全トヨタ労連 突如の不出馬表明に関係者驚き
自民を利することになる衆院愛知11区の前議員、古本伸一郎氏(56)=無所属=の不出馬表明。今回の衆院選を前に、全トヨタ労連と自民党の接近ぶりをうかがわせる場面は幾度となくあった。
象徴的だったのは9月、同労連がカーボンニュートラル実現に向けて行った愛知県の大村秀章知事への要望活動だ。立憲民主、国民民主に加え、初めて自民、公明の県代表も要望に加わった。同労連の鶴岡光行会長は「自動車産業550万人の雇用に関わる問題。党派を超えた取り組みが必要だ」と力を込めた。一方、報道陣から選挙との関係を問われると「選挙は選挙。話す場ではない」とはぐらかした。
実は同労連と自民県連は今春以降、水面下で距離を縮めていた。同労連トップらと面会したある県連幹部は「『私たちはトヨタのためになる人を選ぶ』と明言された」と手応えを感じたという。現在、同県豊田市内などで整備が進むトヨタ自動車の広大なテストコースの用地は県が造成した。同幹部は「汗をかいたのは我々自民。選挙になったら他の党名を書くのはおかしい」と話す。
愛知11区は今回、互いに比例復活のない自民の八木哲也氏と古本氏が激烈な戦いを繰り広げるとみられていた。公示直前の突然の表明に、関係者からは一様に驚きの声が上がった。連合愛知の可知洋二事務局長は「ただただ驚いている。事実関係を確認した上で、必要な対応を協議したい」と述べた。同労連は連合の中核的存在。ある立憲民主の地方議員は「愛知が『民主王国』なのは、トヨタ中心に労組が頑張ってきたからだ。不出馬は選挙区で選択肢を無くし、自民に入れろと言うようなもの。大きい方にみんなが流れていくことになりかねない」と全国への波及を懸念した。【太田敦子、高井瞳】
(2021/10/14 朝日新聞)
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