9月24日のドイツ連邦議会選挙における、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とアンゲラ・メルケル首相の「薄氷の勝利」は、当時恐れていた以上に、ドイツ政界を「茨の道」へ誘う転換点になってしまっていた。
「ドイツ連邦議会選挙、メルケル首相傷だらけの勝利」な件について(2017/9/25)
メルケル率いるCDU/CSUは第一党を維持し、メルケル自身の首相4選も確実だが、与党としての勢力は一気に減退したことになる。第二党、第三党のどちらとも連結できず、代わりに、SPDの前のパートナーで第四党の自由民主党(FDP)、環境政党で第五党の同盟90/緑の党(B90/Gr)と連立し、ギリギリ5割を超す程度の与党勢力で今後の国会運営を行わなくてはならなくなった。
AfDの野党第一党阻止のためにSPDが下野するという選択肢がなかったら、招集後の新議会は混乱の極み確実だった。得票率などの数字以上に、ドイツ政界は与党の勝利を手放しで喜べる状況にはない。 / “「ドイツ連邦議会選挙、メルケル首相…” https://t.co/L01bkKgEXN
— wer y sagt (@kaguramay) 2017年9月25日
もともと、移民政策から経済振興策まで「水と油」なFDPとB90/Grが、CDU/CSUを間に立てるとはいえ、手を結ぶ可能性は限りなく低かった。
それでも、第三党の極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)の勢威伸長を止めるために、敢えて個々の主義主張を二の次とする選択をしてくれるのではないかと、FDPとB90/Grの上層部、特にFDPのクリスティアン・リントナーには期待していた。それが成らなかったのは、非常に残念だ。
戦後、西ドイツ時代も含めて、ドイツが少数与党による政権樹立を強行したケースは無い。更に言えば、11/20現在のメルケルは、先月に正式な任期が切れた後、連立協議を進めるための暫定的に首相を務めている立場でしかない。本来の「一国の宰相」としての強権を、今の彼女が発動できるとは考えにくい。
独日刊紙ウェルトが行った世論調査では、今回の不首尾でメルケルが首相を降板するだろうという感想を上げた層が6割を占めた。それはドイツ国民全体で見ても大きく異ならない傾向だろうし、私も「その結末」になる可能性が高いと推測する。
メルケルの政治生命、ドイツの政治的安定の終わりは近く、それはすなわち、欧州の混迷加速の始まりでもある。世界がヨーロッパの乱れの影響を回避する可能性は、限りなくゼロに近い。東の果て・日本にいる我々も、今から覚悟を決めておくべきだろう。少なくとも、しておかないよりはマシだ。多分ね。
【11月20日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相が次期政権の樹立に向けて進めてきた連立協議が19日、決裂した。自由民主党(FDP)が撤退した。欧州最大の経済大国ドイツが政治危機に陥り、メルケル首相の政治キャリアの終わりにつながる可能性も出てきた。
メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、財界寄りの自由民主党(FDP)、左派の緑の党(Greens)は1か月以上前から交渉を続けてきたものの難航していた。
メルケル首相は、協議の決裂は残念だとしながらも「国がこの難局を切り抜けられるよう首相として全力を尽くす」と表明した。
FDPのクリスティアン・リントナー(Christian Lindner)党首は、ほか2党と連立政権を樹立するための「信頼の基盤」がなかったと説明。悪い連立を組むよりはそれに参加しないほうがよいとの認識を示した。
協議では移民の受け入れなどをめぐって各党の溝が埋まらなかった。メルケル政権は移民に寛容な政策を打ち出し、2015年以降に100万人以上を受け入れたが、9月の総選挙では一部の有権者が反移民・反イスラムを掲げる極右政党に「ドイツのための選択肢(AfD)」に流れていた。
独日刊紙ウェルト(Die Welts)が行った世論調査によると、連立協議の決裂によりメルケル氏が首相の座を降りると考えている回答者は61.4%に上り、そうでないと考えている人の31.5%の大きく上回っている。(c)AFP。
(11月20日 AFP-BB)
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