日本だったら、これで2時間ドラマが一本出来るな。
- 主人公は、雑誌の企画でティラミスのリサーチをやっている女性記者の友達の、刑事の知り合いの、温泉女将の知人の、消防士のイトコの、鑑識の飲み友の、検事の百合友の家政婦
- 犠牲者は、ティラミス道北アドリア海流家元と、その愛人と、一番弟子と、彼らのスキャンダルを追い掛けていたパパラッチ
- 容疑者は、ティラミス道南アドリア海流家元と、腹違いの妹と、曰くありげな田舎の老夫婦
- 謎解きと真犯人を追い詰める舞台は、ドゥイーノのリルケの小道
- そして、本編とは関係無く何故か挿入される、金髪巨乳なイタリア美人のシャワーシーン
てな感じで。
それにしても、「お墨付き」というしょーもない利権が絡むほど「人の醜さ」がクローズアップされるのは、日本もイタリアも同じやね。
最近の日本では、ティラミスはあまりにも一般化し、種類も多くなり過ぎて、この菓子がイタリア生まれであることも忘れられがちだ。定説では、1970年代に北部トレビーゾ市のレストランの女性店主が考案したことになっている。
以前、私もそのレストランでデザートに食べたが、「元祖」と自慢するほどの味ではないし、店の記事を掲載した日本の雑誌をたくさん持ってこられて閉口した経験がある。
さて、今は郷土名物の宣伝時代である。トレビーゾ市を含むベネト州の知事が昨年、このレストランのティラミスを州の「保証付き地域特産品」に指定すべきだと言い出した。「保証付き地域特産品」とは、地域の特産農業品関連の伝統的な食べ物を推薦するため、欧州連合(EU)が定めた制度だ。イタリアではこれまで、ピッツア・ナポレターナ(ナポリ式ピザ)が指定を受けている。
ところが、この発言に、北部フリウリ州の小さな町のレストランの96歳になる女性店主が抗議した。「ばかなことを言うな。あれは私が50年代に考え出した菓子だよ」というのだ。
世界中に広まり、作り方から味まで千差万別になったティラミスの家元争いなど、いまさら無駄な骨折りだと思うのだが。(坂本鉄男)
(3月2日 産経新聞)
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