そもそも論から言えば、ライブドアやカネボウの前例がある以上、コトが発覚した時点で日興コーディアルの上場廃止は避けられない既定路線でした。今月半ばに至って、訂正報告書の提出や米シティの大規模な追加出資意向など、目に見えて動きが活発化していましたが、それらはいわば今回の決定(東証はまだ正式には認めていませんが)の露払い。NYの暴落もあって今日の日本市場は全面下げ。それに「丸められて」しまいましたが、この露払いが上手く奏効していれば、今回の上場廃止が市場に与える影響はさほどでは無かっただろうと思います。
更に言えば、既にして事態は次のステージに移行しています。すなわち、日興の領土と人材をどういう風に受け継ぐか、あるいは食い散らすかの「進駐軍の顔ぶれ」の決定。今のところ、「問題の本当の黒幕」米シティと「肥大化した猛禽」みずほGが、各々の事情から名乗りを上げていますが、日興からすれば、どこと組んでも帯に短し襷に長し。特に上場廃止がほぼ決まった以上、下手にシティの発言力を高めたら山一の二の舞になるのは必定ですから、彼らに対する媚態と警戒心の使い分けに、24時間神経すり減らしていることと思います>日興現経営陣。ちょっと同情しちゃうかも。
個人的には、シティもみずほGもあんまりウェルカムじゃ無いですが、より目先の「弱み」があって、無茶はしないであろうと思われる分、支援主体=みずほGがマシかと思います。もっとも、上場廃止決定となったら、それまでの秋波なんて忘れたかのように、尻に帆をかけてトンズラするんでしょうけどね。和製ハイエナさんは。
日興、上場廃止へ、東証が最終調整、4月に――不正会計、悪質と判断。
東京証券取引所は二十七日、日興コーディアルグループ株を上場廃止にする方向で最終調整に入った。昨年十二月に発覚した不正会計が組織ぐるみで悪質と判断、日興が同日提出した訂正有価証券報告書を精査したうえで正式に決める。日興に対しては米シティグループやみずほフィナンシャルグループ(FG)などが支援の意向を示しており、日興は提携戦略を進める。顧客資産は上場廃止でも影響を受けない。
顧客資産には影響せず
日興は昨年十二月、子会社の投資会社を使い二〇〇五年三月期決算で利益を水増ししていたと発表。これを受けて東証は同十八日に日興株を上場廃止の可能性を周知する監理ポストに割り当てた。
東証は上場廃止基準のひとつとして「財務諸表に虚偽の記載があり、その影響が重大」な場合を規定。東証は日興の不正会計がこの基準に抵触するか、慎重に調査を進めてきた。
すでに日興の前経営陣への聴取も終え、「不正会計は組織的で、市場に与えた影響は大きい」(東証幹部)との見方を固めた。一方、法律家に上場廃止の是非について見解を求め、複数から「上場廃止が適当」との意見を取り付けた。金融庁も東証の判断に反対しないとみられる。
日興は二十七日、〇五年三月期と〇六年三月期の決算について有価証券報告書を訂正した。コールセンター大手、ベルシステム24の買収に絡んで本来は連結に加えるべき損失を連結対象外にしたり、債券の発行日を偽ったりして利益を不当に計上したことが明らかになっている。これらの決算処理に日興の財務担当役員がかかわっていた。
東証は近く日興の上場廃止を正式決定する見込み。上場廃止が決まると整理ポストに割り当てられ、一カ月間は通常通り売買できる。四月中に上場廃止になる。その後は取引所で売買できないが、証券会社などの仲介などで売買できる。株式や投資信託など投資家が日興に預けている資産は、自社分と区別して管理されているので、日興が上場廃止になっても影響はない。
日興が上場廃止になると信用力など経営への影響が懸念される。ただ昨年九月末時点で筆頭株主(出資比率は四・九%)の米シティグループが出資比率の大幅引き上げなどの支援を検討。二位株主であるみずほFGも支援に前向き。日興はこうした国内外の大手金融機関との提携で信用力を補完し、再建を進めていくとみられる。
(2007/02/28, , 日本経済新聞)
上場廃止最終調整、日興、提携戦略で立て直し―米シティ、子会社化を検討。
東京証券取引所が日興コーディアルグループ株の上場廃止で最終調整に入ったことで、日興は他の金融機関との提携戦略で経営の立て直しをめざす。筆頭株主の米シティグループは信用を補完するため日興の子会社化を含めた検討に入った。みずほフィナンシャルグループも支援を検討中で、内外の有力金融機関の日興争奪戦が一気に過熱しそうだ。
米シティグループは一九九八年以来、日興と提携関係にある。持ち株会社の日興コーディアルグループに四・九%を出資する大株主だ。法人取引専門の日興シティグループ証券を日興と合弁で設立し、同社に四九%を出資している。
シティグループは不正会計問題の表面化を受けて、日興への追加の資本支援の検討を始めた。出資比率の引き上げを通じて、日興の信用を補完するほか、シティグループの日本事業を一気に立て直す狙いがある。
日興の株式が上場を維持する場合には、シティは株式公開買い付け(TOB)を通じて、日興への出資比率を株主総会で重要な提案への拒否権のある三三・三%超に高める方針だった。しかし、上場廃止なら、日興の資金繰りが悪化する可能性も否定できない。このためシティグループはすべての株式を取得することで日興を全面支援し、同社を子会社化する方向で検討に入った。
一方、日興に傘下のみずほコーポレート銀行が四・八%を出資するみずほフィナンシャルグループも二十七日までに日興への追加出資案を提示したことが明らかになっている。みずほにとっても日興はこれまで提携関係にあるほか、みずほ傘下の新光証券とみずほインベスターズ証券はやや小粒で強化する必要があるからだ。国内で約百十店舗を抱える日興がみずほ傘下に加われば、証券のリテール分野でも「野村証券並み」の経営規模を確保できる。
日興にとっても内外の有力金融機関と組むことは不正会計で傷ついた信用を回復することにつながる。不正会計が表面化したことで格付け会社が相次ぎ日興の格付けを引き下げており、財務の不安を抑え、取引先企業や投資家の日興離れを食い止めたい狙いもある。
上場廃止になれば、日興株は一時的に大幅に下落することも予想される。だがシティグループやみずほなどの内外の大手金融機関がそろって日興への支援に積極姿勢を見せたことで上場廃止が決まっても日興株を現在保有する株主は株式を売買する機会は確保できそうだ。
(2007/02/28 日本経済新聞)
日興争奪戦、相手はシティ――みずほ対決か協調か、日興、将来像どう描く(アングル)
みずほフィナンシャルグループが日興コーディアルグループへの追加出資の検討を進めている。みずほは独立性に配慮した支援案で日興の理解を得たい考えとみられるが、シティグループとの強固な提携関係を突き崩すのも容易ではない。単独にこだわらず、シティと共同支援の模索に動く可能性もある。(矢沢俊樹)
シティが検討している買収案に比べ、みずほの案はやや穏健なようだ。上場維持なら出資比率は一〇―二〇%前後のもよう。シティのようにいきなり経営の重要事項に関する「拒否権」まで握る三三・三%出資にはやや無理があると考え、上場廃止でも子会社化は避けるとみられる。
見過ごせぬ既成事実化
出資比率が低くても、財務、業務で包括支援すれば、シティ並みに支援の実効を上げられると踏んでいるようだ。
みずほ内には日興が不正会計問題で急速に追い詰められ、シティに傾かざるを得なかったとの見方がある。みずほが支援姿勢を打ち出せば、日興側が少し冷静に代替案をテーブルに載せることができるのではないかとみる。
支援の大前提は、法令順守体制と資産内容の両面のデューデリジェンス(査定)で大きな問題が発覚しないこと。「日興の要請があれば」と再三、強調してきたのもこのためだ。ここにきてシティ傘下入りの方向がどんどん既成事実化されるのを、見過ごすわけにはいかなくなってきたという思いもあるようだ。
しかし日興とシティの取り決めではシティ以外と提携したり資本を受け入れることに一部制約が設けられているもよう。日興の出方は予断を許さない状況で、みずほが今後シティとの敵対を避け、シティと協調路線に転換する可能性も残る。
顧客や人材引き抜きも
現時点ではシティがみずほと組むことについて懐疑的な見方が多い。日興は二十七日に訂正報告書を提出、旧経営陣の責任追及を発表したが、もともとシティはこの機に支援を表明し、たたみかけようとしていたふしがある。シティが合意を急ぐのは間違いない。もっとも仮に日興がシティの傘にぶら下がったとしても、みずほが手のひら返しで日興から資本を引き揚げる事態にはならない見込みだ。
だが中期的にみれば、みずほは自前でグループ証券強化の道を突き進まざるを得ず、日興・シティ連合との協調にもいずれ限界はやってくる。
顧客や人材の引き抜きによって、みずほは「日興を徹底的に無力化する」(金融関係者)可能性があるわけだ。日興争奪の行方は、結局、日興自身が危機を乗り越えた先にどうなりたいのかという問題に行き着く。
(2007/02/28 日経金融新聞)
みずほ、日興支援案提示――上場維持なら出資10―20%、子会社化はせず。
みずほフィナンシャルグループが二十七日までに、日興コーディアルグループに対して追加出資案を提示したことが明らかになった。株式上場が維持されるなら出資比率は一〇―二〇%にとどめ、上場廃止でも子会社化は見送り、業務協力などで信用補完する案が軸。上場の存廃にかかわらず傘下に収める方針の米シティグループの買収案と異なり、日興の経営の独立性を尊重する。
みずほは傘下のみずほコーポレート銀行が日興に四・八%を出資しシティに次ぐ大株主。日興・シティの協議が表面化した後も追加出資に意欲的で、二十六日には日興と金融庁に改めて支援姿勢を伝えた。ただ、今後の海外展開を考えるとシティと全面対決するのは得策でなく、対抗TOB(株式公開買い付け)といった強硬手段には訴えない方針だ。
みずほの支援申し出に対し、日興側は態度を留保している。みずほの支援案表明で、日興が先行して検討しているシティ案とのどちらを選択するかが最大の焦点となる。
東京証券取引所は三月中旬にも日興株の上場維持か廃止を判断する。みずほの支援案では、上場維持の場合は出資比率を最大で二〇%程度に引き上げ、持ち分法の適用会社とする。グループ内の証券会社との提携強化も絡めて日興を支える。
上場廃止なら緊急の経営支援が必要なため出資比率を大幅に引き上げるが、五〇%超に及ぶ出資はしない方針。日興が自主経営できるよう配慮し、必要に応じて資金や人材面でみずほが信用回復の後ろ盾になれるようにする。
シティは上場維持の場合でも、重要な経営の決定事項の拒否権を持つ三三・三%超の出資を検討している。廃止になれば一気に完全子会社化に踏み切る構え。みずほは性急に日興をグループ傘下に収めようとすれば人材流出や顧客離れがさらに加速すると判断し、「緩やかな支援」が日興の理解を得やすいと判断した。
(2007/02/27 日本経済新聞)
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