南海トラフ巨大地震を想定した太平洋沿岸部製造業の移転は急務 ~ 航空機は岐阜に、精密機器は長野に、自動車は富山と岡山に逃がせ!

 その地域ならば、他社・他業態の既存インフラの共用が期待できる。あとは、北関東と防府地区の生産機能と物流機能さえ維持できれば、何とかこの3産業は耐え切れる。

南海トラフ巨大地震被害想定 モノづくり、代替地急務

■東海拠点企業、耐震化や供給網構築

 南海トラフ巨大地震で甚大な被害が想定される東海地方の3県(静岡、愛知、三重)には、日本経済を牽引(けんいん)する自動車や電機メーカーの製造拠点が集中する。日本のモノづくりの「心臓部」ともいえるこれらの地域が機能不全に陥れば、国内外の生産活動に深刻な支障が出るのは避けられない。各企業は未曽有の事態に備え、代わりの拠点確保など対策を急いでいる。

 「製品の生産がストップし、身動きのとれなくなった企業の倒産が相次ぐ」-。南海トラフ巨大地震が起きれば、そんなシナリオが絵空事でなくなる心配は大きい。

 被害が最も大きい東海地方3県は、売上高18兆円超の自動車メーカー世界最大手のトヨタ自動車や、スズキの工場に加え、下請けの部品メーカーなど自動車産業の製造拠点が集中。シャープの主力工場のほか、化学メーカーの工場も多い。3県の製造品出荷額は愛知県が38兆円で全国1位、静岡県が16兆円で3位、三重県が10兆円で9位となっており、3県合わせた出荷額は64兆円と東日本大震災の直撃を受けた東北3県(岩手、宮城、福島)の6倍の規模に達する。

 東日本大震災の際にトヨタ自動車は、生産子会社のセントラル自動車宮城工場(当時)が被災し、部品のサプライチェーン(供給網)が寸断され、国内の全車両工場が停止した。震災翌月の4月の国内生産台数は前年同月比78%減になり、トヨタが統計を取り始めた昭和51年以来、初めて10万台を割り込んだ。南海トラフ巨大地震でも同様の事態が想定され、東海地方3県の生産規模を考えれば、「東日本大震災の影響をはるかに上回る被害規模になる」(中央防災会議)。

 影響は国内にとどまらない。東海地方3県の製造拠点は、海外にまで広がる世界的な供給網に組み込まれている。日本からの部品出荷が止まれば、海外メーカーの生産も停滞し、世界経済の重荷になりかねない。東海地方が、日本を縦断する高速道路や新幹線、名古屋港など国内外の物流の大動脈を抱えることも、こうした懸念に拍車をかける。工場が無事でも、国内外の輸送が断たれる可能性があるためだ。ただ、業績低迷で、国内メーカーがコストを減らすための在庫削減に取り組む中で、部品備蓄は「現実的でない」(大手電機メーカー)など、災害リスクへの対応は容易ではない。

 3県に製造拠点を抱えるメーカーの危機感は強く、トヨタ自動車は東日本大震災の教訓を踏まえ、愛知県内の全12工場で震度6強レベルの耐震補強を実施した。特定の下請けに集中する部品を他社がつくれるようにするなど、代替生産態勢の構築も進める。スズキも津波被害を避けるため、海岸部から約300メートルの位置にあった「二輪技術センター」(磐田市)を、浜松市内の高台に移転することを決めている。生産活動への被害をどこまで食い止められるか-。各メーカーの危機管理能力が問われることになる。

(3月19日 産経新聞)

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