「覆水盆に返らず」に限りなく近い「諫早元に返らず」。判決自体は、関係者の利権維持と責任回避が最優先されてきた公共工事のスタンスに対する、司法と世論への反発&警鐘という点で意義深いものですが、その実効性はというとぶっちゃけ「もう手遅れ」。全てが台無しになった後から正論が通っても…いや、既に「どうにもならない損失を被っている」原告の方々からすれば、判決の実行性よりも先に、ご自分たちの「怒りの正当性」を世に認めさせることが目的なのかも知れませんが。
ただ、今回の判決でどうにもやるせない気持ちになるのが、「今後当面儲かるのは、掘って埋めてでぼろ儲けの土建屋連中だけ」という事実。判決が出た瞬間、自分たちの政策にバッテンをつけられた農水省はともかく、その周辺の「共犯者」公共工事業者は「新しい食い扶持ができた!」とガッツポーズしたんじゃないかと思うと…ほんと、罪深い事業ですよ>諫早湾干拓。
国営諫早湾干拓事業をめぐり、長崎、佐賀県など有明海沿岸4県の漁業者ら約2500人が国に対し、潮受け堤防の撤去などを求めた訴訟の判決が27日、佐賀地裁であり、神山隆一裁判長は事業による漁業環境の悪化を認めた上で、国に5年間、排水門の開放を命じた。堤防の撤去については棄却した。
干拓事業は3月末に完了したが、判決は公共事業の見直し論議に拍車を掛けそうだ。
裁判長は同事業について、「漁業行使権の侵害に対して、優越する公共性ないし公益上の必要性があるとは言い難い」とした。国に対し「(開門期間中に)速やかに中長期の開門調査が実施され、その結果に基づき適切な施策が講じられることを願ってやまない」と注文を付けた。
排水門開放については、必要な防災工事期間を考慮した上で、3年以内に開始するよう求めた。
堤防閉め切りと湾内の環境変化の因果関係について、「相当程度の蓋然(がいぜん)性は立証されている」とし、原告らにこれ以上の立証を求めることは「不可能を強いる」と強調。干拓事業は、湾内および周辺の漁船漁業、アサリ採取、養殖について、漁業環境を悪化させているとした。
国側は、漁獲量減少は事業以前からの傾向で「閉め切りの影響による被害の発生は認められない」と反論していた。
原告らは2002年11月に提訴。このうち、干拓地内の前面堤防工事差し止めの仮処分申請について、佐賀地裁は04年8月に差し止めの仮処分を決定し、同工事は一事中断されたが、福岡高裁は05年5月に決定を取り消し、工事は再開され、今年3月末に事業は完了した。
(6月27日 時事通信)
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