「パックス・アメリカーナ」は既に前世紀の幻想ではあっても、強大国が暴力を振るう際の免罪符としては依然その効力を有していると分かった、米国によるウサマ・ビン・ラディンの殺害劇。
TVのコメンテーターや神楽のような素人が危惧するまでも無く、ビンラディンの死で全てが終わるわけでない。報復テロが発生する可能性は高まるだろうし、中東・アフリカで進む親米独裁国家の政権崩壊も止まることはないだろう。そんなことは百も承知で米国はSEALsとCIAというベタベタな布陣&お約束なまでの奇襲攻撃でビンラディン一家を皆殺しにし、嬉々としてその成果を全世界に発表した。何もかも隠すこと無く、臆することも無くあけすけに。
つまり、米国にとってビンラディン殺しによるテロの脅威の増大とは、懸念材料ではあっても致命傷ではないということだ。自分たちが信じる正義への誇りとその成果への肯定が、それらの背景となる力への信奉こそが、「合衆国」のアイデンティティだということを、為政者のみならず国民全てが自覚していることが、米国の強さ。そしてそのアイデンティティ維持のためには、常に敵が必要だ。「強大だが米国が打倒できる敵」が。かつての日本のように、東側のように、そして今回のイスラム系テロ組織のように。だから、米国にとってテロの脅威の増大とは、懸念材料ではあっても致命傷ではない。テロリストも含めた打倒すべき敵の存在が無くなることが、「合衆国」にとっての致命傷なのだ。
ビンラディンの死が伝えられた直後、数千人の米国民によるホワイトハウス前で沸き起こった「USA!USA!」の叫び。この叫びは9・11への復讐心の高揚、テロリストに対して一定の勝利を得たことによる満足感の発露が大半ではあったろう。当然のことながら、この叫びはテロリストや反米国家による反発を招く。もともとアルカイダは複数のテロ組織の連合体だ。ビンラディン個人の死で胡散霧消する訳はなく、彼のイデオロギーとルートを引き継ぐ者が次のビンラディンとなる。しかし、それが分かっていて尚、米国民は「USA!USA!」の叫びを挙げ続けるだろう。何故なら、世界中の誰よりも「敵」ビンラディンを必要としているのは、ほかならぬ米国民だからだ。「敵」が初代か二代目かは無関係に。
ビンラディン容疑者、米軍の作戦で死亡 大統領が発表
(CNN) オバマ米大統領は1日夜、米軍が同日パキスタンで実施した作戦で、国際テロ組織アルカイダ指導者のオサマ・ビンラディン容疑者が死亡したと発表した。ビンラディン容疑者は、3000人以上の犠牲者を出した2001年米同時多発テロの首謀者とされ、米国が10年以上前から行方を追っていた。
ビンラディン容疑者は銃撃戦の末に死亡し、米当局が遺体を収容したという。米軍に負傷者はなく、民間人にも死傷者が出ないよう配慮したとしている。
オバマ大統領は昨年8月の時点で、パキスタン国内のビンラディン容疑者の潜伏先に関する情報を得たとの報告を受け、先週になって行動を起こせると判断。「本日、私の命令で、米国は潜伏先を標的とした作戦を実行した」と述べた。
ビンラディン容疑者死亡の報を受け、各国にある米国の外交関係施設は警戒を強めている。米国務省も各国に滞在する米国人に注意を呼び掛ける方針。アルカイダ支持者らが、米国民や米国の施設を狙って報復に出るかもしれないとの懸念も浮上している。
(5月2日 CNN.co.jp)
昨夜、BGM代りにつけていた海外ニュースから流れていた彼らのこの叫びは、「ビンラディンは死んだ!復讐に燃える敵来たれ!次の新しい敵来たれ!我々に打倒されるために来たれ!」という肉食獣の雄たけびのようにも聞こえた。そう感じたのは、その時の神楽自身が雄たけびを挙げていたからかも知れないけれど。パートナーを征服しようとベッドの上で獣になっていた最中だったからかも知れないけれど。
ここで「それはとっても『まどマギ漫画』だなって」を紹介。
ふに。
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