<日本シリーズ:日本ハム4-1中日>◇第5戦◇26日◇札幌ドーム
こんな幸せな胴上げがあるだろうか。日本ハムが中日を4-1で下し、4勝1敗で44年ぶり2度目の日本一となった。今季限りでの引退を表明し、日本中から注目を浴びていた新庄剛志外野手(34=SHINJO)が、泣きながら超満員の地元札幌ドームで一番最初に宙に舞った。奔放なパフォーマンスで観客を引きつけ、チームを巻き込んで頂点まで上り詰めた。記憶に残る異色のスターは日本シリーズの舞台も「新庄劇場」にして、野球人生28年間の花道を飾った。
新庄が止まった。動きだすこともできなかった。9回2死。左中間への飛球を追った。森本がウイニングボールをつかむ。全身を丸ごと包み込むように力いっぱい抱き締めた。左肩に顔を埋めた。1秒、2秒、3秒…。固まったまま歩きだすこともできない。チームメートは自然とセンター方向へ、新庄を迎えに行った。1人ずつ抱き合っていく。試合中から流し続けた涙が止まらない。「チャンピオンになったということより、この仲間たちと野球ができなくなるという思いがすごく強くて」。日本一の涙は、北の大地に落ちた。
体がフワリ持ち上げられる。1番最初に3度舞った。両人さし指を天高く突き上げ、札幌ドームの宙を飛んだ。日米含めて初めての経験。輪から外れると、両ひざに手を突いたまま、また号泣した。
8回、最後の打席。いつも笑顔の男が、次打者席から泣いていた。4万2030人観衆が総立ちになった。泣いて、泣いて、最後はフルスイングで3球三振だ。「7回ぐらいから(守備位置の)オレのところに(打球が)飛んできたら捕れなかった」。そう試合後に明かした。
笑顔の裏に、いつも孤独な闘いがあった。人気も成績も低迷したチームを変えた。最後の最後まで、行動を続けた。実はこの日本シリーズ2日前。札幌から敵地へ移動した19日の練習中、ヒルマン監督を呼び止め、衝撃的な直談判をした。「引退するオレではなくて若い選手を出してほしい。スタメンで出る、こういう経験はなかなかできない。成長できるから」。初戦の先発出場を自ら辞退する申し入れだった。売り出し中の若手、紺田の起用を勧めた。
シリーズ出場が決まった時から自問自答していた。その前日「言おうか、どうか迷っている。オレも最後の日本シリーズだし…」。途中出場でも構わないとの考えを約10分間、訴え続けたという。週刊誌に2人の確執の記事が掲載された発売翌日には、ヒルマン監督が事実無根と事情説明に来てくれた。02年米ジャイアンツ時代に新庄が監督と衝突した理由を調査し、束縛せずにプレーをさせてくれた。3年間、わがままを聞いてくれた指揮官に初めて強硬に言った。「そういう考えも分かる。だが最後に男になるという考えもある」。そう説かれて、最後まで出続けた。「ホントに、このマンガみたいなストーリー。出来過ぎでしょ」。ラストの「新庄劇場」を痛快に完成させた。
人生、すべて1人で決断し、歩んできた。阪神入団、メジャー挑戦、日本ハム移籍。そして4月の異例の電撃的な引退表明もそうだった。いつでも「(強運を)持ってるわ、オレ!」と自分を信じて選んできた道は最後に1本、最高の花道へとつながった。
「(3度目の)ビール掛けも慣れちゃった。引退撤回? やめちゃうよ。でも最後にこんな結果になるんだったら、もう1年ぐらいやれば良かったかなあ」。とことん野球を楽しんで、人を楽しませて、新庄は幸せすぎるピリオドを打った。【高山通史】
(日刊スポーツ) – 10月27日
まずは、日ハム44年ぶりの日本一おめでとう!…来年はロッテorソフトバンクがリベンジさせてもらうけどね!(笑)。
それにしても、去年のロッテといい今年の日ハムといい、2年連続で地元密着&プロパー育成重視&個性派プレーヤー中心チームが日本一を獲得ですか(感慨深)。なんだかJリーグみたいかも。っていうか、四国リーグもそうですが、もしかしたらこれこそが今後のプロ野球の進むべき姿なのかもしれませんね。
そして、そのチームの中心の一人にして、漫画のような「日ハム日本一物語」をリアルに完成させた男・新庄剛志。彼が野球という競技の神様に愛されていたかは分かりませんが、野球というエンターテイメントの女神に愛され続けていたとは断言できます。また、これはかなーり贔屓目ではありますが、彼が彼個人のバットやグラブによる結果ではなく、彼自身の存在でチームとファン全体のモラールを引き上げたことが、今回の日ハム日本一の原動力の一端を担っていたことも間違い無いでしょう。つまりは「愛」。その愛を揺れることなく貫き通した新庄。その姿勢、生き方が何より素晴らしい。
お疲れ様新庄。そしてありがとう。今年のプロ野球を最初から最後まで「正々堂々と演出」し続けてくれたことに感謝します。
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日ハムナインと今年のシーズンを見ていると、この作品を思い出さずにはいられなかったり。
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