もしかすると、北朝鮮だけでなく、「手詰まり状態に陥っていた日本政府にとっても」。やりきれない話だが、その可能性は否定できない。
北朝鮮は12日、日本が北朝鮮に対する独自制裁を決めたことに反発し、日朝合意に基づく日本人に関する包括的な調査を全面的に中止し、「特別調査委員会」を解体すると宣言した。朝鮮中央通信が伝えた。日本人拉致問題の解決を目指した日本政府に対する報復措置とみられる。
安倍政権は、日本人拉致問題の解決を最重要課題の一つに据えてきた。北朝鮮も、強硬派の安倍政権との合意によってのみ、拉致問題の解決に向けて日本の世論の同意を得られると判断。これまで交渉を続けてきた。今回の北朝鮮の決定により、拉致問題の進展は極めて難しくなった。
北朝鮮は、日本の独自制裁について「極度の嫌悪感と沸き立つ憤怒を禁じ得ない」と非難。「我々に対する全面的な挑発だ」とし、2014年5月のストックホルム合意について「破棄を公言した」と決めつけた。
そのうえで、12日から拉致被害者を含む日本人の包括的な調査を全面的に中止すると宣言。秘密警察の国家安全保衛部が率いる特別調査委員会を解体するとした。日本に対して「より強力な対応措置が続くことになる」と警告。「今日の重大な結果を生んだ全責任は安倍政権が負わなければならない」とも主張した。
日朝両政府は13年末ごろから秘密接触を開始。14年5月の合意で、日本が北朝鮮に対する制裁を一部緩和することと引き換えに、北朝鮮が拉致被害者を含む日本人の再調査の実施に応じた。日朝双方は、北朝鮮が14年秋ごろまでに最初の調査結果を日本に通報する方向で調整したが、依然、実現していない。(ソウル=牧野愛博)
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