“泡沫候補”浮上させるYouTube 選管も困惑

建前制度の一歩先を行く現実。バックの組織力や資金力、既存の実績/知名度でついている候補者間の立ち位置の差が、ネットという平等な土俵の上で縮まり、候補者のポテンシャルがストレートに評価されるのは、素直に良いことだと思います。評価そのものの中身については別として(笑)。

ただ、現実に政治家として機能するためには、そういった資金力や既存の実績/知名度が重要なのも事実。そこのところは間違えないで欲しいですね>一部層。

 4月8日に投開票される統一地方選挙は、ネットユーザーが動画投稿サイトを手に入れてから初めての大型選挙だ。YouTubeには早速、候補者の政見放送などが投稿され、ブログなどで話題になり、一般紙など大手マスコミが報道しない“泡沫(ほうまつ)候補”がネットで関心を集める。ただ、政見放送がネットで流れる事態は選挙管理委員会の想定外。公職選挙法に違反している可能性もあり、対応に苦慮している。

東京都知事選に立候補したある候補者の政見放送が、3月末にYouTubeに投稿された。当選の可能性が薄い“泡沫候補”だったが、特徴的な外見や話し方、過激な内容がネット上で話題になり、再生回数は、削除されるまでの約1週間で50万回以上に上った。削除後も同じ動画がさまざまな動画投稿サイトにアップされ、それぞれ数万回~10万回ほど再生されている。

候補者の声にエコーをかけたり、機動戦士ガンダムの登場人物の音声を合わせたり、テクノ風にアレンジしたり、候補者の顔をアニメキャラにすげ替えててみたり――この政見放送を編集した“作品”も相次ぎ登場。動画にコメントを付けられる「ニコニコ動画」や「字幕.in」などでは、多くのユーザーが「神」「吹いたww」など感想を書き込んだ。

ブログやmixi日記でも話題だ。各候補の名前がブログで書かれた数を比較する「kizasiチャンネル 東京都知事立候補者」でのランキングも、政見放送が投稿された日を境に急上昇。2ちゃんねるには候補者専用のスレッドも乱立した。ネットユーザーが注目のURLを投稿する「はてなブックマーク」でも上位に入った。

●違法かどうかは微妙だが……

政見放送は、放映時間や回数が厳しく規定されており、ネット上で自由に投稿・再生される事態は想定外。公職選挙法ではネットを使った選挙運動を禁止しており、候補者や支援者が選挙を優位に進める目的で政見放送をYouTubeに投稿すれば、同法違反に問われる可能性もある。

都選管は、投稿したのは候補者以外の第三者だと見ており「違法かどうかは微妙」としている。だが「特定の候補者の映像だけが流れているのが、公正・平等な選挙という観点から問題」と考え、YouTubeへの削除申請手続きに乗り出した。

ただ「申請手続きが複雑」といい、4月3日昼の時点でまだ削除申請できていないという。YouTubeに最初に投稿された動画は4月2日ごろ削除されているが、都選管の申し出による削除ではないようだ。

●Web2.0が選挙を変える?

いわゆる「泡沫候補」とされた場合、新聞社などは記事などでの扱いを制限するため、マスコミに登場する機会があまりない。都知事選で話題になった候補者も、YouTubeと、YouTube動画のありかをネットユーザーに伝えるブログや2ちゃんねる、mixiなどがなければ、ほとんど知られないまま終わっただろう。

「くやしいけど、主張に納得してしまうw」──過激な政見放送をYouTubeで見たあるユーザーの感想だ。泡沫候補として大手メディアに掲載されることはなくても、この候補者が図らずもネットを通じて無コストで主張を広げることができたのは事実。選挙カーとウグイス嬢による“じゅうたん爆撃”に頼らずとも、いわば「コンテンツ発信力」があれば、資金で劣っていても有権者にアピールできる――ユーザー参加型の“Web2.0メディア”は、選挙運動の1つの可能性を示している。

だがネットの進化に法律が追いつかない。ネットを使った選挙運動を解禁しようという動きは10年以上前からあり、2年前の衆院選でも話題になった。当時YouTubeはなかったが、候補者や政党がブログやWebサイトの更新を止めなくてはならないことなどが話題になり、解禁すべきという議論が盛り上がった。法律を改正しようという動きも一部であったものの、いまだに実現していない。

今後もネットは進化を続け、そのたびに以前は考えられなかった方法で露出を高める候補者が出てくるだろう。法律が足踏みしたまま現実は先へ先へと走り続け、そのギャップは広がるばかりだ。

(4月3日 ITmediaニュース)

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