アニメは“量産化”の罠にはまった ~アニメ・ビジネス・フォーラム2007@NBonline

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070129/117879/

 この記事を読んで考えるのは、こんな当たり前かつ「微妙にストライクゾーンを外した」コメントを日経BPが口にした動機が何なのかですね。

 ぶっちゃけた話、1シーズン100本/週体制にまでアニメ番組が増えたのは、アニメ制作業界の要請でもなければ、ビデオグラムをはじめとするコンテンツ二次利用業界の要望でもありません。ひとえに放送/広告枠を手軽に売りたいメディアと代理店の都合によるものです。

 彼らがアニメの取り扱い枠数を増やしたのは、コアな視聴者/二次商品購買層を持ち、社会的評価が上がってきている(ように見える)アニメ関連業界/企業が、彼らにとって「スポンサーを集めやすく、かつ自分達にとって都合のいいクライアント」になったからに過ぎません。それも、ただでさえ制作コストが他ジャンルの番組と段違いに高いのにもかかわらず、手数料20±α%/制作バジェットは常にトップオフさせてくれるという気前のいいお客に。制作会社自身が必要な資金を自力で集め得たとしても、事業フローの関係から「一度メディア側にその金を上納し、サヤを抜かれ、その上で必要な分だけをありがたく頂戴する」という、他の業態ではちょっと考えられないビジネスモデルを素直に肯じてくれるウブな顧客に。

 最近ではそれを嫌って自ら代理店業務に携わる制作会社もいるけど、大半は武家の商法な末路。よほど特定メディアとベッタリした関係でもなければ、メディア-代理店-スポンサーの既存スクラム体制を崩すことは非常に困難。元請け・下請け関係なく制作サイドとこのスクラム体制との構造的な金銭のフローの関係が代わらない限り、一部大手を除いて制作会社は地力でペイすることなど出来はしないです。受託制作だろうがファンドを介した自己ポジ制作だろうが。DVDセールスによるリクープライン云々なんて、この構造的欠陥からすれば局地的な問題、極言すれば些事というものです。

 半ば押し付けられた、半ば代理店の既得権を維持し続けるために「出血を止めたくても止められない」「やりたくない仕事でも続けなくてはならない」「上位者であるメディア/代理店側主導での制作本数増の中、リソースは既に慢性的に不足しているにもかかわらず、それを更に希釈せざるを得ない→作品の質低下という悪循環」。これが足元の制作会社の状況です。一方、トップオフしたカネで一足先に安全地帯に退避しているメディアや代理店は、制作会社に対して「生かさぬ様に殺さぬように」程度のフォローしかしてくれません。

 にもかかわらず、その状況を重々承知しているであろう日経BPが、「アニメ業界の苦戦=市場の飽和、大量制作に伴う作品の質の低下」という下流の問題ばかりクローズアップする真意は何辺にありや?。制作業界の救済&業界全体の縮小均衡への露払い?一部代理店や金融機関やファンド、業界ゴロ達への牽制?それとも…。とりあえず次回以降の論調をチェックですが、叶う事なら現状の責任の所在はどこにあるのかを、制作サイドに押し付けるような結論は避けていただきたいものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です