東証、日興株の上場維持決定=利益水増し重大と言えず-監理ポスト割り当て解除

「米シティGのTOB&子会社化を阻止する」という無理を通すために道理を引っ込めた東証。今回の決定は、個人的に日本の金融史上最大級の「汚点」だと思います。政治的圧力の結果かどうかは別として。

原理原則論で言えば、東証が定めたルールに則れば、日興コは上場廃止にならねばなりません。今回の日興コの虚偽記載が、「有価証券報告書等 に 虚偽記載を行い、市場への影響が大である」場合の上場廃止基準に抵触するということは、ここ最近のカネボウや西武、ライブドアといった前例を見る限りでは明らかです。

http://www.tse.or.jp/cash/stock/stlisting_b.html

無論、過去3例との比較の中で、日興コの罪の軽重を問うことはできます。日興コの虚偽記載は、カネボウや西武のような会計の虚偽記載が上場廃止基準に抵触する実態を隠したものではなく、ライブドアのように、廃止基準に抵触しないとは言え大きく投資家の判断を誤らせるレベルのものでもありません。それ故に「彼らより日興コの証券市場に対する罪は軽い」というロジック自体は成り立ちます。

今回の決定に際して、東証がそのロジックを提示するならばまだ議論の余地はありました。しかし、東証は何を血迷ったか「全社的に組織として不正にかかわっていたかどうか」を重視していると言い出しました。カネボウその他の上場廃止を問うた際の判断要素の第一が「全社的に組織として関与していたかどうか」であったとは、神楽は寡聞にして知りません。いつの間にそんな要素が上場廃止基準に追加されたのでしょう?(ニガワラ)。

もちろん、先の「罪の軽重」論をぶったとしても、「罪の軽重があるとしてどの程度までの虚偽記載が上場廃止基準に抵触するのか」という疑問が、証券市場側から提示される可能性はあります。東証はそれに対して明確な判断基準を説明する義務がありますが、(今回のお粗末な答弁を平気でやるような)東証にまともな詭弁を弄する余裕が無く、ついつい「全体的に~」なんて間抜けな逃げ口上を準備してしまったのかもしれませんね(意地悪く考えれば(^^;)。

いずれにしても東証は、「自分たちは自白を強要することも証拠集めをすることもできない立場」とした上で、「日興コが全社的に組織としてかかわっていたことを確証として得られなかった」「故に疑わしきは罰せず」と言い切りました。これは、裏返せば「過去の事例や明文化されたルールよりも、『(他者の協力も含めて)追及するかどうかの判断も含めた』自分たちの恣意的な裁量で白黒はつける」と言っているようなものです。何なんでしょうね。その中世ヨーロッパの宗教裁判的スタンス。

米シティGに日興コを売り渡したくない気持ちは分かります。しかし、そのために筋を曲げるようなことがあっては、鼎の軽重を問われるというものではないでしょうか?(ていうか、先月末の特別調査委員会の発表からの1ヶ月と、米シティGのTOB発表後との関係者の態度の変化が露骨過ぎです)。

東証はギリギリのところで「理」よりも「利」を選ぶ組織、投資家への説得力に欠けた未熟な市場だと自ら明言してしまいました。「目先の利に目が眩んで大局を見誤った」東証に対する一部企業や海外投資家・金融機関の嘲笑が聞こえるのは、神楽の幻聴だと信じたいです。

 東京証券取引所は12日、日興コーディアルグループの株式について、上場を維持すると発表した。利益の水増しを目的とした日興による有価証券報告書の虚偽記載は、悪質ながらも、市場や投資家などに与えた影響は重大とは言えず、上場廃止には当たらないと判断した。

西室泰三社長は同日記者会見し、「不適切な会計処理に複数の(日興)当事者がかかわったことは否定できない」とする一方で、「(不正が)組織的に行われた確証は得られなかった」などと説明。その上で、「グレーであるからダメ(上場廃止)とは言えない」と強調した。同日開いた臨時執行役員会でも、上場維持に関して異論は出なかったという。東証は13日付で、日興株について上場廃止の恐れがあることを周知する「監理ポスト」の割り当てを解除する。一方、利益水増しで金融庁から課徴金の納付を命じられたことに関して東証は12日、同社に対して注意勧告を実施するとともに、情報の適時開示を行うための体制改善に向けた報告書を26日までに提出するよう求めた。

(3月12日 時事通信)

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