教育再生会議は教育政策を語る無かれ

 つい四半世紀ほど前まで、近代国家における教育政策とは「一定レベル以上の判断力&知識の付与としつけがなされている労働者と軍人」を確保するための手段でした。顧みて、足元はどうかと言えば、その基本姿勢に変化はありません。必要な絶対量が減る一方で必要な質は上昇しているので、如何にしてより良質な上澄み分を無駄なく汲み取るか、それ以外の分をどう産業界に負担無く切り捨てるかが重要になっている点、方法・戦術面での微修正はありますけど。

 いずれにせよ、教育が国家百年の計であり、足元の世論ではなく中期的国家観で議論すべき点であることは、古今東西変わらない不変のロジックであります。この観点で見た場合、バブル時代の弛緩した世論に迎合した「ゆとり教育」政策は、はっきり言って間違いでした(注:官側の「ゆとり」推進目的は途中から変質)。では、その「ゆとり教育」を否定した今回の教育再生会議の主張は正しいのでしょうか。正直そうとは思えません。

 教育再生会議HP(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/index.html

 何故なら彼らの議論は、足元で発生している「いじめ問題」「学力低下問題」などトピカルな話題への対症療法的なアプローチがもっぱらだからです。政治的意図もあってか「ゆとり教育」の検証は上っ面だけ。そして何より、彼らの主張には、国家特に労働市場や産業界への影響など中長期的・マクロ的視点が決定的に欠如しています。彼らの目的視野は「教育界の抱える歪を是正なり糊塗すること」のレベルに止まっており、その先の各界へのインパクトについての議論が全くと言っていいほどなされていない。これら片手落ちな議論の元に教育「政策」を語るなど、ちゃんちゃらおかしい限り。

 教育基本法は教育政策の憲法であり精神です。それに求められるものは、個々の文言・パーツの妥当性よりも国民全体からのコンセンサスです(故に、先日の基本法改正の「国民不在な」強行採決には神楽は全面反対しております)。逆に今回のような実務者会議、学習指導要領の精査作業など戦略立案の実務に必要なのは、教育政策の影響をマクロ的かつ長期的な視点で議論できるエキスパートによって徹底的に練り上げられた、より妥当性に富んだ指針や基本方針です。

 大衆・世論とは最大公約数的に正しいですが、同時に近視眼的で先鋭化しがちなもの。にもかかわらず、そんな世論へ軽率に阿るか如き主張を行い、拙速な結論出しを優先した「国家の大計における教育政策の何たるかがまるで分かっていない」教育再生会議には、官邸主導の政策立案機能の一翼なんて到底任せられません。

 蛇足ながら、彼らの提言で特に噴飯物だったのが「高校の奉仕活動必修化」。「必修化」って段階で「奉仕」じゃないでしょうに。アルバイト活動の推奨・一部単位認定やその際の学校による契約交渉サポート整備を提唱した方が、よっぽど子供の成長のためだったと思いますがね>教育再生会議の先生方。

第1次報告案を大筋了承=教育再生会議、24日正式決定

 政府の教育再生会議(野依良治座長)は19日昼、首相官邸で合同分科会を開き、ゆとり教育見直しやいじめ対策などを柱とする第1次報告の最終案を大筋了承した。24日に安倍晋三首相も出席して総会を開き、報告を正式決定する予定。

 同日の会合には、安倍晋三首相も途中から参加。「ゆとり教育を見直して、すべての子どもに高い学力と規範意識を身につける機会を保障しないといけない」と強調した上で、教育委員会や文部科学省の権限と責任の明確化、学校や教委を評価する仕組みの構築、いじめ相談体制の充実などの必要性を訴えた。

 同会議がこれまでの議論を基にまとめた最終案は、学力向上の具体策として授業時間数の10%増加を明記。また、(1)いじめを繰り返す児童・生徒に対する出席停止措置の積極活用(2)不適格教員の排除を目的とした教員免許更新制の導入(3)教育委員会制度の抜本改革-などを提言している。 

(1月19日 時事通信)

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