マイスター制度が崩壊して幾星霜。日本にとってこの道はいつか行く道か。
【ベルリン=黒沢潤】欧州連合(EU)では数少ない新規加盟国に対する労働市場閉鎖国であるドイツが、市場開放に向けて動き出した。低賃金労働者が大量に流入することへの懸念からだったが、熟練労働者が不足し、独経済の復調に水を差しかねないとの懸念が広がっているためだ。
ドイツは2004年、ポーランドなど10カ国がEUに加盟した際、低賃金労働者が大量に流入することを懸念し、これらの国々に労働市場を開放しない方針を示した。その後、失業者が戦後最悪の500万人台を記録したこともあって、09年までこの政策を堅持する予定だった。
だが、メルケル政権発足とともに、低迷していた経済が徐々に回復。独ケルンのシンクタンク「独経済研究所」によれば、「輸出の世界王者」(独メディア)を支える熟練労働者が不足し、独経済に与える損失は年間約35億ユーロ(約5700億円)になるという。
独労働社会省はこのため、労働市場を来年にも開放する可能性を先月25日に示唆した。保守系与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党の大連立政権も近く、本格協議を始める。
ただ、シュタインマイヤー外相は「ドイツにはまだ380万人(約9%)の失業者がいる」と述べるなど、政権内にも反対論は根強い。また労働組合も「ドイツ人労働者の賃金が低下する要因になりかねない」と異論を唱えている。
しかし、独産業商工会議所など産業界は、100万人ともいわれるポーランド人労働者らの流入がむしろ経済に好影響を与えている英国などの例をもとに、労働組合などの悲観的な見方は誇張され過ぎだと主張。方針転換を促す構えだ。
04年以前のEU加盟国(15カ国)で現在、労働市場を完全に閉鎖しているのは、ドイツとオーストリアの2国のみ。EUのシュピドラ欧州委員(雇用問題担当)は「ドイツ経済がこのような(安定的な)状況にある今こそ、(市場開放を)議論すべきだ」と、早期の方針転換を促している。
(8月5日 産経新聞)
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