備えあっても患いは残る ~ 台湾にシェルター10万カ所 人口の3倍超収容 対中警戒根強く

だからと言って、備えの手を抜いて良いわけはなし。国そのものが瘦せ衰えながら、日常生活面で国民を守るべき課題を山ほど抱えている日本であっても例外ではない。台湾以上にやるべきことは多い。

台湾にシェルター10万カ所 人口の3倍超収容 対中警戒根強く(2023/1/7 毎日新聞)

 中国からの軍事的圧力を受ける台湾は、空爆などに備えた緊急避難先としてシェルター(防空壕〈ごう〉)を全土に10万カ所以上整備している。2022年8月に中国人民解放軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した後は、住民の間でも緊張感が高まった。地域ごとに退避訓練を実施するなど、有事への備えを進めている。

◇五つ星ホテル地下にも

 台北市大安区の光武地区にある地下の商業施設。通常は買い物客らでにぎわう場所が、有事にはシェルターとなる。「私は非常時には民間防衛の小隊長としての役割を担う。住民に対して定期的に民間防衛の啓発活動をしている」。光武地区で台湾の町内会長に相当する里長を務める韓修和さん(46)はそう話す。

 ロシアから空爆を受けるウクライナの都市では、地下鉄の構内などが防空壕の役割を果たしている。台湾は長年にわたり中国の軍事的脅威にさらされてきたため、早くから空爆への備えを進めてきた。1970年代から建築基準関連の法整備を進め、学校などの公共施設や商業施設、地上6階以上のマンションやビルなどにシェルターの設置を義務化した。例えば、日本人観光客に人気の五つ星ホテル「円山大飯店」(台北市)の地下にも73年に大規模なシェルターが建設されている。

 約7800人が住む光武地区では近くの地下街をシェルターに指定している。22年7月25日には住民を対象に大規模な避難訓練をした。シェルターまでのルートの確認や、身を守るための動作の訓練などを実施。これに先立ち地区の警察や行政機関などと会議を開いて非常時の連携などを確認した。

 ◇米下院議長訪台、脅威間近に

 その直後の同年8月4日、米国のペロシ下院議長(当時)による訪台に反発した中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を開始した。韓さんの事務所には住民から、シェルターの場所の確認や、有事に備えた物資の準備などに関する問い合わせが相次いだ。韓さんは「多い日で1日に30件ほど問い合わせがあった。22年は住民意識を変える年だった。住民には警戒心を維持するよう呼びかけている」と力を込めた。

 実際に空からの脅威を間近に感じている地域もある。中国南部福建省の沖合に浮かび台湾が実効支配する金門島では、ペロシ氏訪台の前後、中国製とみられる無人機(ドローン)の飛来が相次ぎ、台湾軍はこのうち1機を撃墜した。金門島には58年、中国軍が40日あまりで計48万発の砲弾を浴びせ、数百人が死亡している。無人機を目撃した陳滄江さん(67)は「中国がこれほどふてぶてしく台湾の領空を侵すのは非常に不愉快で腹立たしい」と憤る。

 台湾当局によると、シェルターは全土に約10万5000カ所あり、台湾の総人口の3倍を超える約8600万人を収容できる。台湾当局は住民への周知を強化しており、21年4月には近くにあるシェルターの場所が地図上で一目で分かるスマートフォンのアプリを導入した。

 ペロシ氏訪台後も、中国軍機が台湾海峡の「中間線」を台湾側に越える事案が相次ぎ、緊張は常態化している。台湾内政部(内政省)民間防衛指揮管制所は「中国軍機による台湾周辺での活動は歴史的な頻度となっている。非常時には市民のスマートフォンに警報が届き、自動的に近くにあるシェルターの位置を知らせる仕組みも導入した」と説明した。【台北、金門島で田中韻】

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