ロームが小型軽量の水素燃料電池を開発 ~ 共同開発先ベンチャーのアクアフェアリーは「本物」。かつてのジェネパックスのような「まがい物」と一緒にしちゃいけない

これだけシンプルな構造で、このスペック。3年前にプロトタイプを見たことがあるが、一般人が用いる簡易型PEFCとしては最適だ。今後、電力食いのスマホが普及するにつれ、Li-ion二次電池からではおっつかない消費電力の供給ユニットとして、急速な需要拡大が見込まれる。

問題は、カートリッジの販売と使用後の廃カートリッジの回収のビジネスモデル。家電量販店や携帯ショップだけじゃなく、コンビニやKIOSKでも売れるようになると、グッと販路は広がるだろう。回収は、現在の電池工業会による乾電池回収に相乗りさせてもらえればラッキーなのだが、さて、周辺業界はどこまで協力的になってくれるか。今から興味津津です。

小型軽量の水素燃料電池、地震計やスマホに展開へ ロームが共同開発

半導体大手のロームが、燃料電池ベンチャーのアクアフェアリー(京都市)、京大と共同で、水との化学反応で発電する水素燃料電池の開発に成功した。水素化カルシウムを入れたカートリッジをシート状にして搭載、小さくて軽量な上、環境にもやさしいのが特徴だ。ロームは2013年春に、まずは地震計用の電源として発売し、その後製品ラインアップを拡充していく方針だ。

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開発した燃料電池シートは38ミリ四方で、重さは3グラム。水素化カルシウムは水素化マグネシウムなどと比べると、水を加えたときの反応に優れるものの、安定的に発電させるのが難しいとされてきた。それをシート状に加工した上で、樹脂でコーティングするなどし、コントロールを効かせながら発電できるようにした。

シート1枚に対し、数グラムの水で湿らせると約4.5リットルの水素が発生し、5ワット時の電力が生まれる。二酸化炭素や有毒ガスを出さず、一般廃棄物として捨てることもできる。シートはアルミでラミネート加工されているため、エネルギーのロスがなく、20年以上の長期保存にも耐えるという。

さらに、シートの枚数は増やすことも可能だ。このため、用途に合わせた出力を確保でき、応用が利く点も便利だ。京大大学院の平尾一之教授(無機材料化学)は「従来方式に比べ、小型で出力が高いといった優位性は明らか。この方式が今後の水素燃料電池の主流になるだろう」とコメントしている。ロームなどは(1)スマートフォン(高機能携帯電話)充電用燃料電池「モバイルアクア」(出力2.5ワット)(2)災害時やレジャー時の高出力燃料電池「ハイパワーアクア」(200ワット)(3)地震計用大容量燃料電池「ロングライフアクア」(400ワット)-の3つの商品展開を計画している。

このうち、ロングライフアクアは13年春にも市場投入する。1台で6カ月間、電源として使えることに加え、現在使われている鉛電池の約4分の1程度に軽量化できるのがポイント。山岳地帯や僻地(へきち)の地震計などの電源として使うのに適しているという。

一方、一般消費者への普及が期待されるのはスマホ向けのモバイルアクアだ。一般的な電池容量のスマホであれば、約2時間でフルに充電することができる。スマホに直接装着して充電するカバータイプと、USB経由で給電するカードケースの2種類をそろえる。コンビニエンスストアなどでカートリッジを販売する計画で、リチウムイオン電池に対抗できる価格設定を検討している。燃料電池は現在、メタノールから水素を取り出すメタノール燃料電池のほか、ボンベに水素をためておく吸蔵合金のような技術が普及している。

調査会社の富士経済によると、燃料電池の世界市場規模は2010年の854億円(11年当時の見込み)から、25年には60倍超の5兆2943億円に成長する見通し。分野別で最も高い成長率が見込まれているのは、バッテリー容量不足が深刻化しているスマホなどの小型電子機器向けだ。日米を中心に、低コスト化や小型化を目指した開発が進んでいる。25年には、10年の約1327倍の3185億円となる見込みだ。(米沢文)

(12月16日 産経新聞)

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