とりあえずアレだ。「弾道ミサイルを破壊してもスペースデブリにはなりません。ミサイルの軌道自体が低すぎるのに加えて、破片の速度は第一宇宙速度に程遠いので、ほぼ100%地上に向けて落下してくるからです」。この記事を書いた金子秀敏氏とやらは、宇宙空間を飛んでいるモノは糞も味噌も一緒に考えているだろ?。少なくとも「弾道」の意味を理解していたら、こんな文章は書けないぞ、と。
それはそれとして、今回の記事の場合、事実誤認というか記者の思い込みが酷すぎるので、ある意味「救われている」のが、論調そのものの電波振り。「周囲の迷惑顧みず、勝手に衛星壊してデブリをばら撒いた」人と、「ミサイル攻撃されたので已む無く打ち落とす(かもしれない)」人とを同列に論じるって、どういう思考回路しているんだ?。破壊活動に対する動機が全然違うだろうに。
挙句に糞味噌の論拠が「どっちもデブリを出すから」。先述の通り、これがまずダウト。次に「中国はデブリの出ないレーザー兵器を開発中→これはミサイル迎撃よりマシなやり方」というこっそり中国をヨイショor擁護。これもダウト。粉々にされてないだけで、レーザーによって「運動エネルギーそのままに」破壊された衛星は、制御不能の物体となって軌道を回り続けます。これをデブリと呼ばずに何と呼べと?>金子殿。
よくもまあ、こんなデンパ記事が一般紙に堂々と掲載されたもんだと逆に感心。金子氏の反米反日ぶりはいつものことであるらしいけど、今回の記事の酷さは常軌を逸してますな。毎日新聞の論説チェック担当の眼は節穴ですか?。それとも(以下略)。
(2.11追伸)
今回の記事について、より詳しくツッコミを入れてらっしゃるブログさんに巡り会いましたのでご紹介。
「週刊オブイェクト」
http://blog.seesaa.jp/tb/33309373
http://obiekt.seesaa.net/article/33309373.html#TOP
早い話が:星くずのブーメラン=金子秀敏
「デブリ」とはフランス語で崩れ落ちた岩のかけら。「スペース(宇宙)デブリ」と言えば、宇宙に放置された人工衛星やロケットの破片である。宇宙ゴミとも言われる。
中国がミサイルを使った衛星撃墜実験を行ったら、握りこぶし大のスペースデブリ517個が発生した。地球の周囲を周回している。もしも、ほかの人工衛星や宇宙ステーションに衝突したら大事故になるという。
日本政府はこのデブリで中国を非難した。確かにデブリの発生は問題なのだが、よく考えるとデブリはブーメランのように日本自身に戻ってくる問題でもある。
なぜなら、宇宙空間を飛んでくる敵のミサイルを迎撃ミサイルで爆破するという米国のミサイル防衛(MD)システムに、日本は資金面、技術面で協力しているのである。
ミサイル防衛に反対する米国の科学者たちは「ミサイルの迎撃は大量の宇宙ゴミを出すので、低軌道を使う人工衛星が永久に使えなくなる」と警告している。中国製のデブリが悪いなら、ミサイル防衛で出る米国製デブリも非難されなければならない。
ではデブリの出ない衛星攻撃兵器ならいいのか。中国の実験後、米国政府が公表した資料によると、中国が研究しているのはミサイルによる衛星撃墜だけではない。「米国の衛星は最近、中国から地上レーザーの照射を受けたが、損害はなかった」という。宇宙軍拡で米国を追う中国はデブリの出ないレーザー兵器も研究しているのだ。完成しているかもしれない。
かつて米国とロシアが弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を結んでいた当時、ミサイルによる衛星攻撃は禁止されていた。レーザー兵器はそれに代わって開発された。
地球の周りには日本の衛星も回っている。破壊されては困る。日本が中国に申し入れるべきは、衛星攻撃兵器の禁止ではないだろうか。
だが、これもブーメランである。衛星のミサイル攻撃を禁じたABM条約を一方的に破棄したのは、米国のブッシュ大統領である。ミサイル防衛に不都合だったからだ。
一方、ジュネーブ軍縮会議で衛星攻撃兵器の禁止を提案してきたのは中国だ。米国は反対した。日本が中国の宇宙軍拡に反対しようとするなら、ミサイル防衛にも反対しなくては筋が通らないのである。(専門編集委員)
(毎日新聞 2007年2月8日)
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