JDC信託 投資ファンドを子会社化(5/20)

 ジャパンデジテルコンテンツ信託(JDC信託)は、自らが出資するふたつのコンテンツ信託を子会社化すると発表した。子会社化するのは、同社が選定したデジタルコンテンツ制作に投資・運用する「投資事業有限責任組合第2東京マルチメディアファンド」(TMF2)と「投資事業有限責任組合中小企業コンテンツ制作ファンド」(TMF3)である。

両ファンドは、JDC信託がアニメやゲ-ムを初めとする中小企業やクリエーターのコンテンツ制作を支援する目的で設立した。

JDC信託が出資総額8億円のTMF2には75%の出資、出資総額5億円のTMF3には50%出資している。昨今の会計監査に厳密化の動きのなかで、同社の出資と経営の関与度の大きさからみて、これらを子会社化することが同社の経営の実態をより反映するものと野判断が働いたと考えられる。

子会社化するに当たって両ファンドの決算内容も開示されたが、両ファンドが現時点で大きな含み損を抱えていることが明らかになった。

TMF2は、16年2月期に2300万円、17年に5000万円の赤字が出ており、ファンド設立から5年足らずで既に総資産が当初の8億円から6億6800万円とおよそ3億3000万円目減りしている。

また、TMF3も設立からおよそ1年で5億円の資本金が、4億7700万円まで目減りしている。これらのファンドは、現在、投資しているコンテンツがこれから完成して、その後に利益の回収期に入ると考えられるが、現在時点での損失は大きく、それが今回の子会社化と連結決算化の背景にあるだろう。

会計厳格化の動きのなかで、ここ数年相次いだコンテンツファンドの実態の一部が思わぬかたちで明らかになったともいえる。そして、その実態は夢だけでなく、なかなか厳しい現実を抱えているようだ。

(アニメ!アニメ!ニュース)

もともと、土井社長@JDCTにTMF2/3で収益を出すつもりはありません。彼が企図しているのは、アニメやゲームなどのコンテンツ業界におけるファンドビジネスのトラックレコード作りと、今後第三者が同様のファンドを組成する際のコンサルティングつまり「格付け」事業の素地作りです。

版権ビジネスが業界の当初想定よりも伸び悩む一方でアニメ制作本数だけは増加。一方で、広告代理店や放送局経由はもちろん制作委員会方式での制作コスト調達も限界に来ているとなれば、第三者からの資金調達=純粋な金融商品としてのコンテンツファンド組成の需要が伸びるのは自明の理。「このスキーム作りのための半国策会社」:JDCTにしてみれば、そのためのデータが取れるのであれば、この記事で指摘された程度の損失は痛くも無いでしょう。「ファンドビジネスによる収益を評価ベースにする金融商品」として「現状の」JDCTにカネを張っていた投資家には、少し納得いかないかもしれませんが。

ちなみに、ここ数年、ファンド組成をはじめコンテンツへの制作投資スキームには、「コンテンツ制作会社の収益力&経営の自立性強化」の一手法になるのではないかとの期待がもたれていましたが、その実現はかなり限定的なものになると思います。

何故なら制作会社の大半は、自社のハンドリング下のコンテンツ流通を、制作段階以外の収益確保のルートを自前で持たないから。宝くじ的に制作投資に対する配当をGETすることはありましょうが、恒常的にそれを実現できるのは、企画から流通までコンテンツビジネス全般にコミットできる企業、そのようなパワーゲームを仕掛ける体力と組織力とを併せ持つ企業だけです。ぶっちゃけ、制作会社の大半は「高い授業料」を払って退場、ということになるでしょうね。実際、今現在そうなりつつあります。

業界構造上、投資家への配当・還元原資をビデオグラム関連などライツの二次使用料収入位からしか捻出できないコンテンツファンドは、REITなどと比べて金融商品としての魅力に乏しいのが実情です(実質的なIRRなんて年10%も行くんだろうか?)。それでもなおかつ金融商品としてコンテンツファンドを組成する者がいるとすれば、そこには、上記のようなコンテンツ業界側の一方的な必要性や、「業界の死屍の上に胡坐をかいてキッチリとサヤを抜く準備」というような表に出せない意図が隠されていると考えるべきでしょう。

コンテンツビジネスの資金調達スキーム

コンテンツビジネスの資金調達スキーム

 

そういやGDHと組んだ「バジリスク」の匿名組合がそろそろ契約終了日だっけ。結果はどんなもんなんだろ?

 

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