自費出版「碧天舎」が倒産、250人「お金返して」

 自費出版大手「碧天舎(へきてんしゃ)」(東京都千代田区)が経営の行き詰まりから倒産し、申し込んでいた執筆者約250人の本が出版できなくなった。執筆者が同社に支払った百数十万~数十万円の出版費用も戻ってこない恐れがあり、出版を心待ちにしていた人からは、「だまされた」と怒りの声が上がっている。

同社は1979年設立。「出版指標年報」によると、2004年には全国の出版社の中で20番目に多い401作品の新刊を出版し、自費出版業界で大手の一角を占めていた。

しかし、他社との競争激化や受注単価の下落で経営が急速に悪化。関係会社や金融機関からの借り入れが膨らみ、3月31日、東京地裁に自己破産を申し出て、破産が決定した。負債総額は同月末現在で約8億6000万円に上る。

関係者によると、同社が今月6日に都内で開いた債権者への説明会で、同社に出版費用を払い込んだものの、出版されない執筆者は250人に達することが報告された。費用は1作品あたり多くて百数十万円。同社の社長は、「私財の中から相当額を投じて資金調達の努力をしたが、経営再建を達成できず、誠に申し訳ない」と謝罪したという。

同社に目ぼしい資産はなく、破産管財人の弁護士は「従業員に対する給料の支払いなどが優先され、執筆者への返金は難しい」と話す。

一方、執筆者たちの怒りは収まらない。神奈川県内の女性(46)は今年2月、同社から30万円の割引を持ちかけられ、120万円で乳がんの闘病記を出版する契約を取り交わした。うち約40万円を支払っている。女性は「経営が苦しいから、必死でお金を集めていたのではないか」と不信を募らせる。

横須賀市の男性(74)は、太平洋戦争中にフィリピンで従軍した日本人兵士の証言を7年にわたり集め、実話を題材にした小説を今月20日に出版するはずだった。その直前の倒産に、「貴重な証言が形にならず、取材相手を裏切ることになった」と憤まんやる方ない。支払った約130万円も戻ってきていない。

近年、自費出版の作品数が増え、中にはベストセラーとなってテレビドラマ化されるなど話題作も出ている。団塊世代の大量退職を控え、出版界ではブームに拍車がかかることを期待する向きもあったが、別の自費出版社の幹部は「自費出版に慎重になる人も多いのでは」と不安を口にしている。

(読売新聞) – 4月12日

個人的というかヲタ的には、今回のあおりでビブロスが逝っちゃった方がショックでかいんですが、それはさておき、詰まるところ自費出版って、色んな自己実現目的を持った人が「誰かに配るため」か「作家として名を成すため」の一手段なんですよね。つまり「少数でいいからコードも持ったまっとうな本を作りたい」が主目的。

でも碧天舎のような自費出版支援会社からすれば、規定の料金で執筆者の要望どおりの製作やったって足が出るばっかりなんですよね。全体のごく一部、例えば筒井康隆みたいにネームバリューやトピカルな話題を持った人間が、大手出版社との柵嫌って自費出版で出す手助けをして、そのスケールメリットを享受することで自費出版支援会社は収益を得ているってのが実態です。文芸社とかは書店に自社出版物あるいは自社がサポートした自費出版物向けに書店に棚枠確保してますが、あれはあくまでも上記のような要望を持った人達向けのポーズに過ぎません。売るための営業コストをかけられるような体力は彼らには無いです。

ただ、文芸社とかは外注なら外注なりに、それなりの質のいい文芸・校正部門を持って、素人作家の指導をやってましたが、碧天舎はそれすらケチって、素人の原稿を受けとったらそのまま右左で本にしちゃってたようですね。そりゃ、競争激化の前に、そんな適当な本作りしてたら売れるわけないですわなー。

 

筒井康隆かく語りき

筒井康隆かく語りき

 

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