村上ファンド捜査 インサイダー取引の疑い

 村上世彰氏率いる「村上ファンド」がニッポン放送株を大量売買した経緯などについて、東京地検特捜部が捜査を進めていることが2日、明らかになった。村上ファンドや同放送株を一時大量取得したライブドアなどの関係者らから事情聴取するなどして、証券取引法違反のインサイダー取引などに当たるかどうか調べているもようだ。

関係者の話や村上ファンド側の株の大量保有報告書によると、村上ファンドはニッポン放送株を順次取得、2003年に事実上2位の大株主となり、04年には保有株が18%を超え、筆頭株主となった。

昨年1月17日、フジテレビが同放送株の公開買い付け(TOB)を発表した直前、村上ファンドはさらに同放送株を大量に買い付けた。

翌2月8日、ライブドアが同放送株の大量獲得を公表。村上ファンドは保有株の一部をライブドアに売却したとされる。

(共同通信) – 6月2日

宮内被告@ライブドアらの供述を通じて、既にニッポン放送を巡る一連のインサイダー取引の動きを掴んでいた節のある特捜部ですが、堀江被告を追い詰め切れていない状況から、村上氏はじめヒルズ族の人間達は累が自分達に及ぶとはあまり考えていなかったようです。ぶっちゃけ、特捜部をナメてましたね。

ところがぎっちょん、投資ファンドへの規制強化の動きに危機感を強めた村上氏が海外逃亡を計っているのを受けて、逃がしてはならじと遅まきながら強制捜査に踏み切る方針を固めたのがその特捜部。それを嗅ぎ付けビックリ仰天慌てて帰国した村上氏がセントレアでテンパリ疾走!…というのがこれまでの顛末。1月のライブドアの時に続いての事前のメディアへの情報リークは、証券市場への影響分散と他のヒルズ族への牽制でしょうね。スポンサーの目もあって堪え性の無い村上氏は、1月のそれを軽視して阪神電鉄に手をつけ墓穴を掘りましたが、嗚呼、驕れるグリーンメーラーモドキは久しからず。

ちなみに、今回の報道から間髪をいれず、村上ファンドは阪急による阪神電鉄株のTOBに乗る意向を示しましたが、これは身動きが取れなくなる前に一刻も早くエグジットを進めよとスポンサーからの要請否命令があったからでしょうね。そして、それは即ち、予定されている強制捜査の動きを受けて、スポンサーが資金の引き上げを伝えてきたという何よりの証左。飼い主に見限られた村上ファンドはもう駄目でしょう。既得権益者も含めた周囲ビジネス界への細工・工夫がもう少し巧かったらもう少し長生きできたかもしれないけど、今更言っても詮無いこと。

村上氏はライブドアの若造連中を手玉に取って利益を上げましたが、彼もまたスポンサーの前には無力な丁稚だということが改めてハッキリしました。彼もホリエモン同様、時代の寵児と言うより、先鋭化することでしか自己のアイデンティティを飼い主や証券市場に認めさせることが出来なかった時代の鬼子なのかもしれません。そう考えると、村上氏も少し哀れな御仁ではあります。

今後の問題は、これから村上ファンド予備軍を監督官庁や証券市場がどう処遇するかですね。ライブドアに続いて村上ファンドに司直の手が手が入った訳ですが、では今後、全てのアヤシイ投資ファンドに捜査の投網が掛けられるのかと言うと、それは無いでしょう。キャパが絶対的に足りないですし、そもそも今回の「本当の目的」は別にあるし。ヒルズ族をはじめ少々行儀の悪いファンドやスポンサー(特に反社会勢力系)に、「少し大人しくしないと次はお前だ」という脅し位しかやれないでしょうね。「捕まった者損で済ませていいのか?」という意見もあるでしょうが、世の中なんてそんなもんです。

とはいえ、掲示板の荒らしと同じで、騒動がひと段落したらまたぞろ蠢動する連中は必ず出てきます。いずれ、そいつらをプチプチ潰すことになるのでしょうから、早いか遅いか、規制で縛るか縄で縛るかだけの違いかもしれません。違法と脱法の隙間で蠢く連中によるこの手の犯罪には、対症療法的な対応しかできないと割り切るのも大事ですしね。もっとも、それを正論とする一部エコノミストの主張には違和感を禁じ得ませんけど。

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