「現状維持」のその先に

一昨日、北朝鮮に対する安保理の制裁決議が採択されました。軍事的制裁の可能性を織り込むかどうかで米と中露で丁々発止があったようですが、それはあくまでも「ポーズ」に過ぎないと断言できます。何故なら、北朝鮮の現体制が崩壊して一番困るのは米国だからです。

北朝鮮の現体制が崩壊すれば、その後の「戦後処理」としては、主に以下の3つが考えられます。「1.国連主導の新政権での再建」「2.韓国との合併」そして「3.中国ないしロシアによる実質統治」。このうち一番可能性があるのは、「1→2or3」ないし「1→2→3」でしょう。そのどちらにしても、米国からすれば極東地域における中露との緩衝地域を失います。

その結果、米国は、トランスフォーメーション戦略下での「環太平洋のシーパワー国家群連合による防衛網」構築が不十分なまま、日本-台湾を「環太平洋連合」の最前線にせざるを得なくなります。中露+南北朝鮮のランドパワー国家群に対する同防衛網の構築、同連合の関係強化は既定路線とは言え、今この時点で性急に事が進むのを米国は望まないでしょう。故に、米国は北朝鮮を攻撃しません。

一方、上手に北朝鮮を崩壊させれば一番恩恵を被る可能性がある中露にしても、「受け皿=韓国」の体制が整わないまま北朝鮮が崩壊し、その混乱が自国に波及することは望まないでしょう。むしろ、崩壊寸前の北朝鮮を押し付けられた韓国が適度に弱体化して、自分達の影響を更に受けやすくなるという状況こそが、事ここに至れば彼らにとって望ましい。故に、中露は北朝鮮への(経済)制裁は今後も積極的に継続します。北朝鮮に止めを刺さない程度で。

神楽にとって、今回の制裁決議自体はあまり興味ありません。北朝鮮を上手く引きずり出した次の6カ国協議で、上記の3大国がどのようにして、北朝鮮&韓国で「崩壊ゲームという盤上での役作りと駆け引き」を行うかの方に既に興味津々です。

え?日本?。全体の流れの中じゃタダのコマに過ぎないんで、プレーヤーの資格なんてほとんどありませんが何か?。

北制裁決議 安保理採択 禁輸・資産凍結を明記

【ニューヨーク=長戸雅子】国連安全保障理事会は14日午後、核実験実施を発表した北朝鮮に対し、経済制裁を規定した国連憲章7章41条に基づく制裁決議案を全会一致で採択した。1991年国連に加盟した北朝鮮に対する安保理の制裁決議は初めて。核実験発表から1週間以内というスピード採択に、北朝鮮の朴吉淵国連大使は「完全に拒否する」と宣言した。

決議案は日米韓など9カ国が提出していた。加盟国は採択から30日以内に履行状況を報告し、安保理に設置される制裁委員会が確認する。北朝鮮が決議を順守した場合、制裁解除の余地を残す文言も残し、中国、ロシアの要求にも配慮した。

中国が「緊張を生む恐れがある」と反対した北朝鮮に出入りする船舶の貨物検査(臨検)については「大量破壊兵器の流出阻止のため(強制力を伴う)臨検を含む協力的行動を取るべきだとする」との表現から「協力的行動を要請する」に弱めた。中国は採択後の演説で「臨検は行わない」と明言した。

7章をめぐる交渉では経済制裁を定めた「7章41条」に限定するよう中露が要求。軍事行動にもつながる42条を含む「7章(全体)に基づいて行動する」との文言を主張する米国と対立したが、双方の主張を併記する形で妥協が成立した。日本の大島賢三国連大使は「今回の決議は武力行使にかかわることは想定していない」と述べた。

(産経新聞) – 10月16日

 

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